子どものむし歯

こんにちは!

高知県大豊生まれ 

はちきん歯科医師 「山下雅(みやび)」です。

香川県高松市「木太デンタルクリニック」で勤務しています。

あっという間に桜も葉桜になりました。春はあっという間ですね。

今回は、岡山大学大学院小児歯科分野教授の仲野道代先生が日本歯科医師会雑誌で書かれていた、「注意すべき子どものむし歯」について書こうと思います。

①砂糖を控えるワケ

「赤ちゃんにはお砂糖を控えましょう」って、どこかで聞いたことがあると思います。

これは、離乳食が始まって、小さい頃から甘みの強いものに慣れると、そればっかり欲しがるようになるから、薄味に慣れさせましょうという意味で言われていると思われがちです。

それも間違いではないのですが、他にも理由があります。

前回、赤ちゃんが生まれた時にはお口の中にはむし歯菌はおらず、生活していく中で周りの人の唾液を通じて菌が感染し、3歳頃までにお口の中に定着する、とお伝えしました。(詳しくは前回のみやびブログへ…)その中でも、むし歯菌の代表であるミュータンス菌のお口の中への定着が、スクロース(ショ糖とも言い、砂糖の主成分です)によって促進されることが分かっています。そのため、3歳まではできるだけスクロース(=お砂糖)を控えたほうがいいのです。

もちろん、離乳食後期以降は、味付けに少し砂糖を使ったり、上の兄弟がいると同じものを食べたがったり、あるいはおじいちゃんおばあちゃんがお菓子をあげたがったりすると思います。砂糖が絶対ダメ、というわけではありません。例えば、おやつやご飯の時に、甘いお菓子や菓子パンばかりを与えないとか、飲み物はジュースではなくお茶にするとか、そういった工夫を少し意識するだけでも違ってきます。

ちなみに、赤ちゃんや子どもにとっての「おやつ」は「捕食」で、3食で足りない栄養やエネルギーを補うものです。なので、必ずしも「甘いお菓子」である必要はありません。おにぎりやバナナ、ふかし芋、チーズ、ゆでた野菜などでOK。そういうものにするだけでも、砂糖の量を減らすことができます。

②イオン飲料によるむし歯

イオン飲料を哺乳瓶に入れて夜間就寝時に飲ませていることで、主に上あごの乳歯に広範囲にむし歯ができることがあります。

「イオン飲料」には、「経口補水液」と「スポーツドリンク」などが含まれます。文字のごとく、電解質が体に効率よく吸収されるよう作られた飲料のことです。

テレビコマーシャルなどの影響で、イオン飲料が身体に良いものと思いこみ、水分補給のために水の代わりにイオン飲料を日常的に与えてしまうと、特に夜間就寝中の飲用はむし歯の原因となります。

え?電解質が身体に効率良く吸収されるんなら、身体にいいんじゃないの?甘いジュースならともかく、なんでむし歯に??

そう思うかもしれません。

確かに、下痢や嘔吐、熱中症などで医療機関を受診した際には、症状が軽度であれば、医師からイオン飲料を勧められることも多いです。

イオン飲料は、経口補水液は嘔吐・下痢などによるものも含む軽度〜中等度の脱水症状の時、スポーツドリンクは汗を掻くような激しいスポーツの時には有効です。でも、脱水状態が改善したり、普段生活する分には、イオン飲料による水分補給の必要はなく、水で十分なのです。

普段の食事をしている乳幼児にイオン飲料を与えると、電解質が多すぎて、体内の浸透圧が高まります。すると体内を一定に保とうと身体が働き、もっと水分を必要とするため、喉が渇きます。

またすぐに水分を欲しがる→良かれと思ってイオン飲料を与える→水分を欲しがる→イオン飲料を与える→この繰り返しでお腹が張ってご飯を食べないことも

上記のような悪循環が生まれます。

スポーツドリンクは甘くて美味しいので、水やお茶を飲みたがらなくなる可能性もあります。

また、スポーツドリンクは意外にも多くの糖分が含まれています。

500mlペットボトルで、コーラ56.5g、ポカリスエット33.5g、アクエリアス23.0gもの糖分が含まれています。(成分表記では炭水化物として表記されているものがほとんどですが、この場合は糖質とほぼ同義語です。)

これだけ砂糖が含まれていても、甘く感じにくいのは、スポーツドリンクには酸っぱさがあるからです。

また酸性やアルカリ性を表すpHが3.6〜4.6と低く(pH5.5以下で歯の表面が溶け出す「脱灰」が起こります)、飲み続けると常に歯の表面が溶け出す状態になります。

通常であれば、物を食べたり飲んだりした後は、唾液の作用でお口の中の酸性が中性に中和され、少しであれば「脱灰」によって溶け出した歯の表面も「再石灰化」という働きで元に戻ります。

しかし、常にスポーツドリンクを飲んでいたり、唾液の分泌が少なくなる夜間就寝直前や夜間就寝中にこれを飲むと、唾液の力が働かずに歯の表面が溶け出したままになり、豊富にある糖分によって虫歯菌が増えてさらに歯を溶かしてむし歯になってしまいます。

日本小児歯科学会は、特に乳幼児に対しては、イオン飲料を水の代わりに使用しないことを推奨しています。

これから暑くなる時期、熱中症に気をつけながら、適切な水分補給をして遊ばせてあげましょう。

もし、今現在、ジュースやイオン飲料で水分補給をしているという方は、少しずつ水で薄めていったりして、水やお茶に切り替えていきましょうね。

何事も急に変えるのは難しいので、少しずつ…。気になることがあればご相談くださいね!

桜の花言葉は「精神美」「優美な女性」「純潔」です。

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